衛生管理技術
傾向と対策
美容師筆記試験における「衛生の消毒法」について、過去の出題傾向から重要なポイントをまとめます。
これらをしっかりと覚えておくことで、試験対策に役立つでしょう。
1. 消毒の基本概念
- 消毒の定義:消毒は病原性微生物を減少させることを目的とした方法です。滅菌と異なり、すべての微生物を完全に除去することは求められません。
- 物理的消毒法と化学的消毒法:物理的消毒法には高温(蒸気や乾熱)や紫外線があり、化学的消毒法にはエタノールや次亜塩素酸ナトリウムなどの薬剤が使われます。
2. 消毒法の種類と適用範囲
- エタノール消毒:70〜80%のエタノールが最も効果的。皮膚消毒や器具の表面消毒によく使われる。
- 次亜塩素酸ナトリウム:0.1%〜0.5%の濃度で器具や表面の消毒に使用される。血液や体液の汚染がある場合にはより高濃度が必要。
- 逆性石鹸:陽イオン界面活性剤を含み、皮膚や手指の消毒に使われる。
- 紫外線消毒:紫外線照射により、空気中や表面の病原菌を殺菌する方法。
3. 器具の消毒方法
- 鋏やコームの消毒:使用後はまず汚れを落とし、その後エタノールなどで消毒。金属製の器具は高温消毒も可能。
- タオルやガウンの消毒:使用後は洗浄し、熱湯消毒または乾熱滅菌を行う。
- ブラシの消毒:ブラシは毛がついているため、消毒液に一定時間浸漬するのが一般的。
4. 感染症対策
- 感染症の基礎知識:美容業務に関連する代表的な感染症(例えば、B型肝炎、C型肝炎、HIVなど)についての知識は重要。
- 衛生管理:使い捨て手袋の使用や、器具の適切な消毒法、感染症患者への対応法などが頻繁に問われる。
5. 法律やガイドラインの遵守
- 美容師法に基づく衛生管理:美容師法第2条では、衛生管理が義務付けられている。定められたガイドラインや基準に従うことが求められる。
- 消毒に関する基準:日本美容師会が発行するガイドラインや衛生管理基準に従うことが必要です。
これらのポイントを押さえておくと、衛生分野での出題に対して十分に対応できるでしょう。しっかりと学習し、実際の業務にどう適用されるかを理解することも重要です。
それでは、ここから「感染症」について学んでいきましょう。
3.衛生管理技術
消毒方法 | 濃度・作用時間 | 血液 | 特徴 | 注意点 |
紫外線消毒 | 85μW/㎠以上 20分間以上照射 | 無 | ・ほとんどの材質を損なわない ものがぬれない ・芽胞○ ・結核菌○ ・ウイルス○ ・栄養型菌○ | ・汚れは取り除いてから消毒する ・陰のできる器具には不向き |
煮沸消毒 | ・100℃ 沸騰後2分間以上煮沸(血液有) | 有 無 | ・物理的 ・簡単 ・効果確実 ・芽胞× ・結核菌○ ・ウイルス○ ・栄養型菌○ | ・被消毒物を水面より下に置く ・血液以外カミソリも含 |
蒸気消毒 | 80℃を超える 10分間以上蒸気に当てる (一般にタオル蒸し器) | 無 | ・簡単 ・芽胞× ・結核菌○ ・ウイルス○ ・栄養型菌○ | 温度に注意 |
エタノール消毒 | 1.76.9~81.4% 10分間以上浸ける。(血液有) 2.布にしみこませて拭く | 有 無 | ・使用が簡単 ・すぐ乾く ・芽胞× ・結核菌○ ・ウイルス○ ・栄養型菌○ | 刃物類の消毒に最適 |
次亜塩素酸ナトリウム水溶液 | 1.0.1%以上 10分間以上浸けた後水洗いし、乾燥(血液有) 2.0.01%以上 | 有 無 | ・漂白作用もある ・洗剤と併用できる ・芽胞× ・結核菌× ・ウイルス○ ・栄養型菌○ | ・金属類に不適 ・動物繊維に不適 ・色ものには不適 |
逆性石けん水溶液 | 0.1%以上 10分間以上浸けた後水洗いし、乾燥 | 無 | ・ほとんどの材質を損なわない ・無色・無臭 ・芽胞× ・結核菌× ・ウイルス× ・栄養型菌○ | 石けん、洗剤などの成分は完全に除いてから消毒する |
両性界面活性剤消毒 | 0.1%以上 10分間以上浸けた後水洗いし、乾燥 | 無 | ・ほとんどの材質を損なわない ・無色・無臭 ・芽胞× ・結核菌○ ・ウイルス× ・栄養型菌○ | 石けん、洗剤などの成分は完全に除いてから消毒する |
グルコン酸クロルヘキシジン | 0.05%以上 10分間以上浸けた後水洗いし、乾燥 | 無 | ・材質を損なわない ・応用範囲が広い ・芽胞× ・結核菌× ・ウイルス× ・栄養型菌○ | 石けん、洗剤などの成分は完全に除いてから消毒する |
消毒
1 かみそり(頭髪のカットのみの用途(レーザーカット)に使用するかみそりを除く。以下同じ。)及びかみそり以外の器具で、血液の付着しているもの又はその疑いのあるものの消毒の手順
(1) 消毒する前に家庭用洗剤をつけたスポンジ等を用いて、器具の表面をこすり、十分な流水(10秒間以上、1リットル以上)で洗浄する。
(注)1:器具は、使用直後に流水で洗浄することが望ましい。この際流水が飛散しないように注意することが必要である。2:消毒液に浸す前に水気を取ること。
(2) 消毒は次のいずれかの方法により行う。
(注) 消毒薬は、医薬品を使用すること(以下同じ。)。
ア 煮沸消毒器による消毒
沸騰してから2分間以上煮沸すること。
(注)
1 陶磁器、金属及び繊維製の器具の消毒に適するが、くし類等合成樹脂製のものの一部には加熱により変形するものがある。
2 水量を適量に維持する必要がある。
3 さび止めの目的で、亜硝酸ナトリウム等を加えることができる。
イ エタノールによる消毒
76.9v/v%~81.4v/v%エタノール液(消毒用エタノール)中に10分間以上浸すこと。
(注)
1 消毒液は、蒸発、汚れの程度等により、7日以内に取り替えること。
2 消毒用エタノールを希釈せず使用することが望ましいが、無水エタノール又はエタノールを使用する場合は、消毒用エタノールと同等の濃度に希釈して使用すること(以下同じ。)。
ウ 次亜塩素酸ナトリウムによる消毒
0.1%次亜塩素酸ナトリウム液(有効塩素濃度1,000ppm)中に10分間浸すこと。
(注)
1 金属器具及び動物性繊維製品は、腐食するので使用する場合は、必要以上に長時間浸さないなど取扱いに注意すること。
2 消毒液は、毎日取り替えること。
3 消毒薬を取り扱う際には、ゴム手袋を着用する等、直接皮膚に触れないようにすること。
4 製剤は保管中に塩素濃度の低下がみられるので、消毒液の有効塩素濃度を確認することが望ましい。
(3) 消毒後流水で洗浄し、よくふく。
(注)
1 クリッパーは刃を外して消毒すること。
2 替え刃式カミソリは、ホルダーの刃を挟む内部が汚れやすいので、刃を外してろ紙等を用いて清掃すること。
3 洗浄に使用したスポンジ等は使用後、流水で十分洗浄し、汚れのひどい場合は、エタノール又は次亜塩素酸ナトリウムで消毒すること。
2 かみそり以外の器具で血液が付着している疑いのないものの消毒の手順
(1) 消毒する前によく洗浄する。
(2) 消毒は前記1の方法又は次のいずれかの方法により行う。
ア 紫外線照射による消毒
紫外線消毒器内の紫外線灯より85μW/cm2以上の紫外線を連続して20分間以上照射すること。
(注)
1 器具の汚れ具合、収納状況等により効果が期待できないことがあるため、器具の汚れを十分に除去した後、直接紫外線が照射されるような状態に収納した後、照射する。
2 構造が複雑で、直接紫外線の照射を受けにくい形状の器具類の消毒には適さない。
3 定期的に紫外線灯及び反射板を清掃することが必要である。
4 2,000~3,000時間の照射で出力が低下するので、紫外線灯の取替えが必要である。
イ 蒸し器等による蒸気消毒
器内が80℃を超えてから10分間以上湿熱に触れさせること(温度計により器内の最上部の温度を確認すること。)。
(注)
1 ガラス、陶磁器、金属及び繊維製の器具等の消毒に適するが、くし類等合成樹脂製のものの一部には加熱により変形するものがある。
2 タオル等布片類を器内に積み重ねて消毒する場合、最上部のタオル等が湿熱に充分触れないことがある。
3 器内底の水量を適量に維持する必要がある。
ウ エタノールによる消毒
76.9v/v%~81.4v/v%エタノール液(消毒用エタノール)を含ませた綿若しくはガーゼで器具表面をふくこと。
エ 次亜塩素酸ナトリウムによる消毒
0.01%~0.1%次亜塩素酸ナトリウム液(有効塩素濃度100~1,000ppm)中に10分間以上浸すこと。
オ 逆性石ケン液による消毒
0.1%~0.2%逆性石ケン液(塩化ベンザルコニウム又は塩化ベンゼトニウム)中に10分間以上浸すこと。
(注)
1 石ケン、洗剤を用いて洗浄したものを消毒するときは、十分水洗いしてから使用すること。
2 消毒液は、毎日取り替えること。
カ グルコン酸クロルヘキシジンによる消毒
0.05%グルコン酸クロルヘキシジン液中に10分間以上浸すこと。
(注) 消毒液は、毎日取り替えること。
キ 両性界面活性剤による消毒
0.1%~0.2%両性界面活性剤液(塩酸アルキルポリアミノエチルグリシン又は塩酸アルキルジアミノエチルグリシン)中に10分間以上浸すこと。
(注) 消毒液は、毎日取り替えること。
3 消毒に必要な器材
ア 液量計 100ml用及び1,000ml用
イ 消毒容器 消毒用バット(ふた付きのものが望ましい。)、洗面器、その他消毒に必要な容器
ウ 卓上噴霧器
4 タオル、布片類の消毒
(1) 加熱による場合は、使用したタオル及び布片類を洗剤で洗浄した後、蒸し器等の蒸気消毒器に入れ、器内が80℃を超えてから10分間以上保持させること。この場合、器内の最上部のタオル等の中心温度が80℃を超えていないことがあるので、蒸気が均等に浸透するように十分注意すること。
(2) 消毒液による場合は、使用したタオル、布片類を次亜塩素酸ナトリウム液に浸し、消毒すること。
消毒終了後は、洗濯し、必要に応じて乾燥して保管するか又は蒸し器に入れること。
(3) 血液が付着したタオル、布片類は、廃棄するか又は血液が付着している器具と同様の洗浄及び消毒を行うこと。
5 手指の消毒
客1人ごとに手指の消毒を行うこと。消毒方法は次の方法によること。
ア 血液、体液等に触れ、目に見える汚れがある場合、あるいは、速乾性擦式消毒薬が使用できない場合は、流水と石けんを用いて少なくとも手指を15秒間洗浄すること。
イ 上記以外の場合は、速乾性擦式消毒薬を乾燥するまで擦り込んで消毒すること。
6 その他の消毒
(1) シェービングカップ等の間接的に皮膚に接する器具類についても、その材質に応じ、上記に掲げた消毒方法のいずれかの方法により消毒をすること。
(2) 理容所・美容所内の施設、毛髪箱、汚物箱等の設備については、適宜、消毒すること。
動画解説
解答と解説
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紫外線消毒に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか?
第47回出題
(1)タオルやケープなどの布片類の消毒に適している。
(2)物体の表面にしか作用しないので、深部や影の部分は消毒できない。
(3)目や皮膚に直接照射すると害がある。
(4)プラスチックの一部は劣化するものがある。 -
正解(1)
紫外線は物体の表面のみに有効で深部を消毒することができないため、政治の厚みや折りたたまれた状態などを考慮するとタオルやケープなどには適さないためタオル類には「蒸気消毒」が適している。
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美容師法施行規則に定められている消毒法に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。
第46回出題
a 血液が付着していないブラシは、逆性石鹸が0.1%以上である水溶液中に10分間以上浸す。
b 血液が付着したはさみは、1㎠当たり85マイクロワット以上の紫外線を20分間以上照射する。
c 血液が付着していないかみそりは、エタノールが76.9%~81.4%の水溶液を含ませためんもしくはガーゼで表面を拭く。
d血液が付着したくしは、次亜塩素酸ナトリウムが0.1%以上である水溶液中に10分以上浸す。
(1)aとb
(2)bとc
(3)cとd
(4)aとd -
正解(4)
紫外線消毒は、血液の付着していない器具に用いられる。かみそりは血液の付着の有無にかかわらず76.9%~81.4%のエタノール水溶液に10分間以上浸さなければならない。