感染症
傾向と対策
美容師筆記試験の「衛生管理」における感染症の出題に関して、過去の出題傾向を分析すると、以下のポイントを押さえることが重要です。
1. 感染経路
- 接触感染(直接・間接)
- 飛沫感染
- 空気感染
- 水・食品を介する感染
- 動物や昆虫を介する感染
それぞれの感染経路の具体例を覚えておくと、問題に対応しやすくなります。
2. 感染症の種類
- 細菌感染症(例:結核、黄色ブドウ球菌)
- ウイルス感染症(例:インフルエンザ、ヘルペス、エイズ)
- 真菌感染症(例:水虫、カンジダ症)
- 寄生虫感染症(例:疥癬)
これらの感染症の原因となる病原体や特徴、予防方法を覚えることが重要です。
3. 消毒・殺菌の方法
- 消毒剤の種類と使用方法
- エタノール、次亜塩素酸ナトリウム、クレゾールなど
- 滅菌の方法
- 高圧蒸気滅菌、ガス滅菌、乾熱滅菌
それぞれの方法がどの病原体に効果的か、適切な使用方法を把握しておきましょう。
4. 感染症の予防対策
- 手洗いの重要性
- 消毒液の使用
- マスクの着用
- 換気と湿度管理
美容師としての具体的な実践方法や、法律で定められている感染症予防措置についても理解が求められます。
5. 法律と規制
- 美容師法や感染症法に基づく衛生管理
- 美容師が感染症に対してどのような対応が求められているか
- 報告義務や隔離措置に関する知識
これらのポイントをしっかりと押さえ、過去問や模擬試験で確認しながら学習すると良いでしょう。試験では、具体的な状況に対してどのように対応すべきかを問う問題が出題されることが多いので、実践的な理解を深めることが大切です。
それでは、ここから「感染症」について学んでいきましょう。
2.感染症
感染症の発生しない環境整備
環境衛生の大きな役割に、さまざまな疾病、特に感染症の発生しない衛生的な環境をつくることがある。カやハエなどの衛生害虫やネズミなどは種々の病気を媒介するので、これらを駆除して病気の予防を行い、さらに、消化器系感染症などは、上下水道を完備することによって少なくすることができる。
感染成立の3要因と感染対策
感染症は ①病原体(感染源)②感染経路 ③宿主 の3つの要因が揃うことで感染する。
感染対策においては、これらの要因のうちひとつでも取り除くことが重要になる。
特に、「感染経路の遮断」は感染拡大防止のためにも重要な対策となる。
感染源
病原体に感染した人(感染者)・動物・昆虫や、病原体で汚染された物や食品が感染源となる。具体的には、感染者や感染動物などからの排泄物・嘔吐物・血液・体液など、保菌者(キャリア)や感染動物が触れた物や食品など。感染源を隔離したり消毒することなどが有効な対策方法である。
しかし、病原体に感染していても発症しないキャリア(伝染性病原体(細菌・ウイルスなど)の保菌者)もいるので、十分な対策ができない場合がる。
感染経路について
感染が起こるには、感染源から病原体が人間に侵入しなければならない。そのため、感染経路の遮断は、重要な対策の1つとなる。
日常生活において、注意すべき主な感染経路としては、接触(経口)感染、飛沫感染、空気感染(飛沫核感染)の3つが挙げられる。
宿主
動物や植物が寄生して生活する相手の生物。
感受性宿主とは、免疫力が低下し感染症になりやすい人のことです。 この場合は、免疫力の低下を招かないように健康管理に努めるほか、ワクチン接種や栄養管理等の対策を講じることも重要。
分類 実施できる措置等 分類の考え方
分類 | 実施できる措置等 | 分類の考え方 |
一類感染症 | ・対人:入院(都道府県知事が必要と認めるとき)等 ・対物:消毒等の措置 ・交通制限等の措置が可能 | 感染力と罹患した場合の重篤性等に 基づく総合的か観点から見た危険性 二類感染症 の程度に応じて分類 |
二類感染症 | ・対人:入院(都道府県知事が必要と認めるとき)等 ・対物:消毒等の措置 | 感染力と罹患した場合の重篤性等に 基づく総合的か観点から見た危険性 二類感染症 の程度に応じて分類 |
三類感染症 | ・対人:就業制限(都道府県知事が必要と認めるとき)等 ・対物:消毒等の措置 | 感染力と罹患した場合の重篤性等に 基づく総合的か観点から見た危険性 二類感染症 の程度に応じて分類 |
四類感染症 | ・動物への措置を含む消毒等の措置 | 一類~三類感染症以外のもので、主 に動物等を介してヒトに感染 |
五類感染症 | ・発生動向調査 | 国民や医療関係者への情報提供が必要 |
指定感染症 | 一類から三類感染症に準じた対人、対物措置(延長含め最大2年間に限定) | 既知の感染症で、一類から三類感染 症と同等の措置を講じなければ、国 民の生命及び健康に重大な影響を与 えるおそれ |
2022年厚生労働省ホームページより引用
感染症法の対象となる感染症
分類 | 感染症の疾病名等 |
一類感染症 | 【法】エボラ出血熱、クリミア・コンゴ出血熱、痘そう、南米出血熱、ペスト、マールブルグ病、ラッサ熱 |
二類感染症 | 【法】急性灰白髄炎、ジフテリア、重症急性呼吸器症候群(SARSコロナウイルスに限る)、結核、鳥インフルエンザ(病原体がインフルエンザウイルスA属インフルエンザAウイルスであってその血清亜型がH5N1であるものに限る。以下「鳥インフルエンザ(H5N1)」という。) |
三類感染症 | 【法】腸管出血性大腸菌感染症、コレラ、細菌性赤痢、腸チフス、パラチフス |
四類感染症 | 【法】E型肝炎、A型肝炎、黄熱、Q熱、狂犬病、炭疽、鳥インフルエンザ(鳥インフルエンザ(H5N1)を除く。)、ボツリヌス症、マラリア、野兎病 【政令】ウエストナイル熱、エキノコックス症、オウム病、オムスク出血熱、回帰熱、キャサヌル森林病、コクシジオイデス症、サル痘、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)、腎症候性出血熱、西部ウマ脳炎、ダニ媒介脳炎、チクングニア熱、つつが虫病、デング熱、東部ウマ脳炎、ニパウイルス感染症、日本紅斑熱、日本脳炎、ハンタウイルス肺症候群、Bウイルス病、鼻疽、ブル セラ症、ベネズエラウマ脳炎、ヘンドラウイルス感染症、発しんチフス、ライム病、リッサウイルス感染症、リフトバレー熱、類鼻疽、レジオネラ症、レプトスピラ症、ロッキー山紅斑熱 |
五類感染症 | 【法】インフルエンザ(鳥インフルエンザ及び新型インフルエンザ等感染症を除く。)、ウイルス性肝炎(E型肝炎及びA型肝炎を 除く。)、クリプトスポリジウム症、後天性免疫不全症候群、性器クラミジア感染症、梅毒、麻しん、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症 【省令】アメーバ赤痢、RSウイルス感染症、咽頭結膜熱、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎、感染性胃腸炎、急性出血性結膜炎、 急性脳炎(ウエストナイル脳炎、西部ウマ脳炎、ダニ媒介脳炎、東部ウマ脳炎、日本脳炎、ベネズエラウマ脳炎及びリフトバレー熱を除く。)、クラミジア肺炎(オウム病を除く。)、クロイツフェルト・ヤコブ病、劇症型溶血性レンサ球菌感染症、細菌性髄膜炎、ジアルジア症、侵襲性インフルエンザ菌感染症、侵襲性髄膜炎菌感染症、侵襲性肺炎球菌感染症、水痘、性器ヘルペ スウイルス感染症、尖圭コンジローマ、先天性風しん症候群、手足口病、伝染性紅斑、突発性発しん、破傷風、バンコマイシン 耐性黄色ブドウ球菌感染症、バンコマイシン耐性腸球菌感染症、百日咳、風しん、ペニシリン耐性肺炎球菌感染症、へルパン ギーナ、マイコプラズマ肺炎、無菌性髄膜炎、薬剤耐性アシネトバクター感染症、薬剤耐性緑膿菌感染症、流行性角結膜炎、 流行性耳下腺炎、淋菌感染症 |
指定感染症 | 鳥インフルエンザ(病原体がインフルエンザウイルスA属インフルエンザAウイルスであってその血清亜型がH7N9であるものに 限る。) |
2022年厚生労働省ホームページより引用
解説動画
感染症まとめ
- 生ワクチンを作り出したのは、「ジェンナー」である
- フレミングが抗生物質であるペニシリンを発見した
- 康増進法は感染症の予防を規定していない法律である
- 一類感染症は感染の疑いがあるだけでも強制的に入院させられる事がある
- 三類感染症の患者は就業禁止の措置をとられることがある
- 四類感染症は人から人へは感染しない(動物から動物)
- 結核は二類感染症である(一 二類は強制入院)
- 三類感染症は無症状病原体保持者に対する予防措置がされる
- 五類以外の感染症は直ちに届出をする
- 腸管出血性大腸菌感染症は三類感染症である
- 都道府県知事はねずみの駆除などの措置ができる
- 診断した医師は直ちに保険所長を経由して都道府県知事へ届けを出す
- A型肝炎は四類感染症である
- 結核の患者発見の為健康診断では胸部のX線検査が行われる
- 結核の予防接種はBCGである
- 我が国における結核死亡者は2000人台である
- 肺以外の臓器もおかされる
- 健康な人には感染をおこさない病原体が、抵抗力が低下したときなどに感染し、発病することを日和見感染という
- 病原体が体内に侵入し発育 増殖することを感染という
- 病原体が体内に侵入してから最初に症状が現れるまでの期間を潜伏期間という
- 病原体が体内に侵入、定着する部分はだいたい決まっている
- 免疫は先天性と後天性に大別することができる
- 母親から受け継いだ免疫が3-4か月まではある
- 一度かかるとかからないかかかりにくい感染症がある
- 他の個体で生じた抗体を移入して免疫を獲得する方法がある
- 潜伏期間であってもすでに病原体を体外に排出している場合がある
- 患者の早期発見は、病原体に対する有効な手段である
- 病原体を保有する土壌が感染源となることがある
- 細菌には生育に不適当な環境になると芽胞を形成するものがある
- DNAまたはRNAのいずれかを有している
- 多くの病原菌の発育温度は15度~45度である
- 細菌の芽胞は、熱や乾燥に対して抵抗が強い
- 細菌の増殖には十分な水分が必要である
- 細菌の発育 増殖には紫外線は有害である
- 感染症のうちウイルスによるものは狂犬病である
- マラリア クリプトスポジウム症は原虫である
- 破傷風は細菌である
- 麻しんは予防接種法により定期の予防接種が行われている
- 麻しんの病原体はウイルスである(空気感染)
- 麻しんは感染力が非常に強い
- 急性灰白髄炎(ポリオ)に対しては、予防接種法に基づき傾向接種で行われている
- 風しんに対しては定期予防接種で行われている
- 乳児期のジフテリア、百日咳および破傷風に対しては混合ワクチンが用いられている
- A型肝炎は経口感染が主な感染経路である(食中毒)
- B型肝炎は母子感染が一番多い
- C型肝炎は輸血が主な感染経路である
- ウイルス性肝炎のおもな症状は、全身のだるさ、食欲低下、吐き気、黄疸である
- ワクチンやトキソイドによる予防接種は人工能動免疫である
- 他の個体で生じた抗体を移入して免疫を獲得することを受動免疫という
- ヒトが犬のジステンバーにかからない性質を先天免疫という
- 麻しんや百日咳は長期にわたり能動免疫が成立する
問題と解説
-
ウイルスに関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
第44回出題
(1) 増殖は2分裂で行われる。
(2) DNAとRNAの両方の核酸をもっている。
(3) 生きた細胞内でのみ増殖する。
(4) 変異を起こすことはない。 -
正解 (3)
ウイルス自身は細菌のように単独では場管することはできない。まずウィルスが宿主細胞の表面に吸着し、細胞の中に優入する。次いでその細限のタンパク質合成などのシステムを利用して、ウイルスの構成成分を合成した後、それを材料として多数のウイルス子を産生し、細胞外に放出することで増発する。
DNAとRNAの両方の核酸をもっているのは細菌であり、ウイルスはDNAあるいはRNAのどちらか一方をもっている。
ウイルスはその生活環境に適応してしばしば変異を起こし、強毒または弱毒となる。
-
常在論最に関する次の記述のうち、繋っているものはどれか。
第44回出題
(1) 人体の皮膚や粘膜などには一定の細菌が定着している。
(2)鼻腔に存在するブドウ球菌は感染源となることはない。
(3)ビタミンなど人体に必要な物質を産生する腸内細菌もある。
(4)常在細菌には、病原体が人体へ侵入することを防ぐはたらきもある。 -
正解 (2)
鼻腔のブドウ球菌は主要な感染源の一つである。
-
予防接種に関する次の記述のうち、興っているものはどれか。
第44回出題
(1) 対象疾病や実施方法は健康増進法によって定められている。
(2) 法に基づく予防接種には、定期に行うものと臨時に行うものがある。
(3) 対象疾病により接種回数は異なる。
(4) 対象疾病により接種対象年齢は異なる。 -
正解(1)
予防接種に関する法律は健康増進法ではなく、予防接種法による。健康維進法は栄養改善や食生活、喫煙などの生活習慣の改善をはかるものである。