エステティック概論

エステティック概論
関連法規
公衆衛生/衛生管理
サロン経営学
接客マナー
救急法

目的

「エステティック」という言葉は広く一般消費者に認知されてきました。
サービス業の一業種として年々拡大してきましたが、現状では「エステティック」という言葉やその業の範囲について明確に定義された法律が無いのも事実です。

また、まだまだお客様の間にはエステティックに対する贅沢感や不安感は払拭されていないでしょう。
今後、エステティックがより多く認知され、国民の生活に根ざしていくためには、「生活必需性のあるエステティック」を発信していくことが重要です。

この科目ではエステティックの全体像を正しく理解し、エステティックの本質を知ることで真の美はなにかということを理解することを目的としています。
そして、お客様の信頼と継続で生まれる「真の美」を追求していくことの喜びと使命を強く自覚していくために役立つ学びにしてください。

エステティックの概念

エステティックとは?

エステティックの本質は、人間の心にある「美しくありたい」「若々しくありたい」という欲求や願望を実現して、人々に幸せと満足感をもたらすことにあります。

エステティックは一般的に健康な人に対して
「一人ひとりの異なる肌、身体、心の特徴や状態を踏まえながら、手技、化粧品、栄養補助食品および、機器、用具、等を用いて、人の心に満足と心地よさと安らぎを与えるとともに、肌や身体を健康的で美しい状態に保持、保護する行為」であって、病的な皮膚や身体の一部分を治療することではありません。

この基本理念はエステティック業界の統一自主基準の中で「エステティックの定義」として明記されています。

「エステティック」について学ぶには、まず「美」とは何かということを理解することが大事です。
美の定義は時代とともにも変わりますので、現代では美を求めながらも何を美とするかを定義するのが難しい時代です。
美肌や、健康美や躍動美であり美しさにつながるります。

たとえば「装飾的な美容」は人を明るく充実させ、「基礎的な美容」は自信と豊かさを与えます。
エステティックを知るためには人間として、女性として、あらゆる角度から「美」と「美しさ」「健康」を継続して学び続けることが大切です。

※統一自主基準とは?

エステティック業にかかわる者が、エステティックに関連する法律を遵守し、業界全体の健全な発展や社会的必要性の向上を図るために自ら取り組むべき基本的な規範、基準となる諸事項を具体的に定めたもの。
日本エステティック振興協議会の定める「エステティック業統一自主基準」がそれにあたる。

2 内面美容としてのエステティック

(1) 基礎的な美容と装飾的な美容

「美容」には装飾的な美容と基礎的な美容があることを先に述べました。
「装飾的な美容」は瞬間的に、あるいは短時間の中で変化を楽しむことができる美容ですから「外面からの美容」ともいえます。
たとえば、ファッション、ヘアスタイル、メイク、ネイル、アクセサリーなどがあります。

一方、「基礎的な美容」は日々続けることで心身の健康と美を維持していく「内面からの美容」ともいえます。
スキンケア、プロポーション作りから、適度の運動、バランスのとれた食事や睡眠など、健康管理を含めたもので人間性までが大きな要素となります。

この二つの美容は影響し合っています。
つまり、内面の美しさは外面に反映し、外面の美しさは内面を豊かにしていきます。

(2) エステティックに求められるもの

エステティックは特に「基礎的美容」を中心に働きかけをしていきます。

外部からのトリートメント技術と内面からの健康な精神や肉体作りが主な役割ですから、おのずから継続性が重視されます。
継続するためにはお客様とエステティシャンとの間に強い結びつきが必要であり、そこには信頼のきずなが求められます。

そのためにエステティシャンは幅広い専門的な知識と技術、人に好かれる豊かな人間性を身につけ「お客様のお肌の守護役」としての自覚と責任、さらに使命感を持つことが大切です。

エステティックの本質と領域

1.エステティックの語源と歴史

エステティックという言葉には「美学、審美、美意識」という意味があります。
私たちは「美」や「美しさ」について日ごろ、何気なく話をしていますが、「美しいものとは何か」「美しさの本質は何か」「美しさはどのようにして生まれるのか」などということを追求していくのが、「美学(エステティック)」なのです。
このような「美」の追求は紀元前の古代ギリシャ時代から研究されてきました。
この時代の考え方には宗教思想が背景にあり、人間の「心」についても哲学者の間で研究されていました。

(1) プラトン
古代ギリシャの哲学者B.C427~347

「美」とは美しいものの中にある美的成分ととらえ、それをと定義づけ、「その絶対的美的成分は神の業として存在する」と唱えました。

(2) アリストテレス
古代ギリシャの哲学者B.C384~322

「美」を客観的、合理的な法則の中に求め、「美しいものの中にプロポーションといった一定の比例、比率、律動がある」と主張し「黄金分割」や人体美の「八頭身説」などを美のカノン(基準)とした金分割の比率で作られたといわれている代表的なものとしては、術の刻「ミロのヴィーナス」があります。

このようにプラトンが唱えた「イデア」もアリストテレスの「カノン」も美しいと感じる対象物の中に美的要素や基準があるという思想ですが、この考え方は美しいと感じる人がいようといまいと美は存在するということですから、いわば「人間不在の美」といえます。

(3) カント
ドイツの哲学者1724~1804

「美は認識の対象ではなく、満足の対象である」と主張して、それまでの「人間不在の美」の考ぇ方から「美しいと感じるのは極めて主観的なことである」という「人間存在の美」を唱えました。

(4) バウムガルテン
ドイツの哲学者・美学者1714~62

バウムガルテンは、著書『感性的認識学(エステティカ)』の中で「美とは人間に満足や快感を与える対象である」と定義づけ、美は見る人の心の中にあると「感性の美学」を提唱し、美を初めて「エステティック」と表現しました。そして、美学を哲学の分野から独立した一部門に立ち上げ、それからは「エステティック」は美を語る言葉として用いられ現代にいたっています。

2.エステティックの領域

エステティックを大別すると三つの領域に分かれます。
エステテティシャンはそれぞれの力量に応じて仕事を行っていきます。

(1) ソワンエステティック

健康な人を対象にして、心身を美しく、健やかにし、これを保つた合的な施術と指導 (カウンセリングなど)をエステティックの専門サロ設サロンなどで行います。
なお、ソワンエステティックの考え方は、おけるエステティックの基本理念といえます。

(2) メディカルエステティック

美容整形は美容外科ともいわれ、英語では「Aesthetic plastic surgery」(エステティックプラスティックサージェリー)となります。
医業行為ではなく、医療機関において医師の指導の下で科学的理論に基づく治療補助としてエステティシャンが行うスキンケアなどの施術などをメディカルエステティックといいます。
たとえば、医薬品だけでは改善しがたいニキビや色素沈着の除去などを含めたスキンケアを、美容外科医院や皮膚科医院などで行います。

ソワンエステティック

1.ソワンエステティックの語源

「ソワン」はフランス語で「soin」と書きます。
辞書を引くと「手入れ、手当て、世話」、さらに「心遣い、念を入れて、注意深く」といった意味があります。
今日よくいわれている「気配り」と同義と考えられるでしょう。

つまり、ソワンエステティックの基本的な考え方は、エステティックの定義にあるように、実用的、機能的な施術面だけでなく、カウンセリングを含めて精神的、心理的な作用も重視しています。
日本のエステティックの原型はフランスのソワンエステティックにあるのです。

2.目的と効果

ソワンエステティックは目的別に
①フェイシャルケア、②ボディケア、③脱毛、④メイクアップ、⑤ネイルケアに大別されます。

ソワンエステティックの主な目的

①肌を美しく、きれいに、健やかにする
②体型や体調を整える
➂快適感を味わい、安らぎやくつろぎを感じる(リラクセーション)
④老化の緩和、改善に役立てる

カウンセリングから始め、手技をベースに化粧品、医薬部外品、エステティック機器、用具などをそれぞれの目的に合わせて組み合わせながら施術を行います。
この継続により、ソワンエステティックの効果が大いに期待されるのです。

手技を主としたものであれ、機器を主としたものであれ、これを行うエステティシャンがエステティックにとって何よりも重要な要素です。
したがって、エステティシャンには高い水準の技術と豊富な経験、皮膚や心、身体あるいは化粧品などエステティック科学に関する深く広い知識、さらに人間性が要求されます。

それらの技術や知識に細心の心遣い、ホスピタリティーマインド(おもてなしの心)がともなえば、本物のソワンエステティックが完成されるのです。

※ホリスティック
ホリスティック(holistic)の語源はギリシャ語の「holes(ホリス)」で、全体的、包括的を意味する。ホリスティックエステティックとは、美を部分的にとらえず全体として考える包括的なエステティックのこと。つまり、素肌や外面の美しさだけでなく、豊かな心、しなやかな動き、にじみ出る知性など、生活環境やライフスタイルを含めて、人間を「美の統一体」としてとらえる考え方である。

3.スキンタッチの重要性

エステティック施術の効用は、心・肌・体へのホリスティックなものですが、肌・体への直接的な効用と心を介しての間接的な効用に分けて考えることができます。

直接的な効用は、施術による皮膚・皮下脂肪・筋肉などに対する物理的・学的な作用によって、肌表面や毛乳の洗浄や化粧品の有効成分の記選が発となり、内部では組織の血行がよくなって代謝が促進されるということです。

一方、間接的な効用は、ハンドマッサージや指圧などによるスキンタッチの心地よい刺激が心に安らぎと満足を与えることによって脳の働きが活性化され、「自衛神経」「ホルモン」「免疫」という三つのしくみを介して、肌や体の調子を整えるということです。

すなわち、脳はスキンタッチの気持ちよさを感じる「心」の中枢であると同時に、「肌」や「体」を制御する「自律神経」「ホルモン」「免疫」という三つのしくみを一手につかさどる中枢でもあるということです。
「心」「肌」「体」は脳でつながっているのです。

ですから、脳が気持ちよさを感じると、気持ちよさが三つのしくみを伝わって全身に行き渡り、肌や体の調子もよくなります。
そして、肌や体の調子よさを感じるのもまた脳です。
このように、脳を中心としたプラスの循環が動き出すと、美しくなっていく喜びを感じ、それが新たな意欲につながっていきます。

エステティックが人を癒しながら美しく健康にしてくれる「究極のホリスティックケア」といわれている根拠はそこにあり、エステティックにおいて「肌に触れる」「心で感じる」ということは、人の心に大きく作用していく大切なことなのです。

脳生理学者である時実利彦博士は著書「人間であること』(岩波新書/1970年)の中で「肌に触れあうこと」について次のように語っています。

「肌のふれあいは、百万言を使うよりも、どんな視聴覚の方法よりも、より効果的に、お互いの心を一体化し、心の連帯を文句なしに作ってくれる(後略)」

つまり、スキンタッチは心理的効果に深いかかわりを持つことを強調しています。

時実利彦(ときざねとしひこ)
生理学者 1909~73
東京大学医学部卒業。東
京大学名誉教授。脳生理学を専門とした。

「人間であること」から
肌に触れ合うことについて、時実利彦博士は次のように述べている。

「肌のふれあいは、百万言を使うよりも、どんな視聴覚の方法よりも、より効果的に、お互いの心を一体化し、心の連帯を文句なしに作ってくれることは、日常の生活体験で知っている。(中路)冷酷さを感じさせる

機械文明の現代社会に生活する私たちは、お互いに個を主張するきびしい対人関係によって、とかく疎遠になりがちな心と心を結びつける配慮が必要である。(中路)その点では、握手、頬ずり、接といった西洋流の直接法の方が、東洋流の間接法よりも、より効果的だといえよう。
しかし、私たち東洋人は、肌のまわりに心の雰囲気をただよわせているために、直接法でなくても、十分に効果をあげているようだ。」

4.五感美容

五感美容という言葉は、1990年頃に誕生した言葉です。
1982(昭和57年)の「森林浴構想(当時の林野庁が、国有林の自然環発を国民の健康作りの場として用することを提用)」に始まった快適環境ブームを背景に、五感を取り入れ、より効果的なエステティックの研究と考え方が構築されていきました。

その当時、五感美容の考え方を取り入れれたステティックサロンのお客様を対象に「やすらぎ」の要因についてアンケートを実施した結果です。

第1位スキンタッチ(触覚)
第2位「環境音楽(聴覚)
第3位、4位「照明」「壁の色」(視覚)
第5位「香り」(嗅覚)
第6位「ハーブティー」(味覚.嗅覚)

五感の快適刺激がサロンのやすらぎに寄与していることが分かります。

美容師国家試験対策なら完全個別講習のNa4'へ!

美容師国家試験スクール na4’
合格のために「できる」をサポート!完全個別指導。Na4’の美容師国家試験対策パーソナルコースは完全1対1(マンツーマン)指導です。1人の講師が1人の生徒さまだけを指導するので苦手を克服できます。